2016.09.28

中国・高校生のアメリカ留学事情



 中国の全国統一大学入試の競争の熾烈さは、昔から“千軍万馬が丸木橋(通過するのが困難な道の比喩)にひしめいている”と形容されるが、最近は移民ブーム・留学ブームに伴い、中国人学生の留学の低年齢化傾向が顕著になり、中国の学生により多くの選択肢が生まれてきた。 
 学生が高校から直接海外留学したり、国内で高校の学業を終えてから、全国統一大学入試に参加せずに直接TOEFL、IELTS、SAT、ACT等の受験を通して、外国の大学本科に出願するようになってきた。アメリカはこうした学生たちの海外留学の最大の目的地なのである。

 ある統計データによれば、最近5年間の全国統一大学入試棄権率は10%前後で横ばい推移している。2014年、全国939万人の大学受験生のうち、100万人近い学生が受験を放棄し、そのうち、留学或いは移民のために受験を放棄した者が21%を占めたが、今後も引き続き増加するものと思われる。
 2014年には、1万人近い内地の学生が香港で実施された第1回のSAT受験に参加したが、これは2007、2008年に比べて6倍前後増加している。


 現在、アメリカの大学に留学している中国の学生は30万人を超え、アメリカの外国人留学生の三分の一強を占めている。そのうち、本科生と大学院生がそれぞれ半数を占めており、しかも、本科生増加の勢いがすさまじく、中国人留学生激増の主要因となっている。
 2013年にアメリカが中国の高校生に発給したアメリカ留学ビザは3.2万件近くで、これは8年前の50倍にあたり、中国は韓国を上回り、アメリカ留学の高校生が最も多い国となっているのである。



アメリカ留学最新政策


 中国の学生が全国統一大学入試を棄権してアメリカに留学する最大の理由は、大学受験競争が熾烈すぎるからである。保護者は子供が可愛いのであれこれと気を揉み、経済状況さえ許せば、同じ努力でよりよい大学に入れるように予定よりも早く海外留学させることを望んでいる。
 無論、国内での学業成績が振るわず、よい大学に合格できる可能性が少ないため、海外の高校に留学させ、留学という迂回路を経由することで競争がさほど熾烈でない環境下でよりよい大学に入学できることを願っている保護者も大勢いる。

 全国統一大学入試を棄権し、子供をアメリカに留学させるにあたって保護者が注意しなければならない問題がいくつかある。
 訪問学者或いは政府派遣のアメリカ駐在員の子供は、無料でアメリカの公立学校に入ることができるが、圧倒的多数の子供は私立学校に入ることになる。私立学校の授業料と雑費は多くの場合年間4、5万ドルで、保護者はまず家庭の経済状況がこの授業料と雑費を担うことができるかどうかを考えなければならない。さらに子供の性格、生活の自立力、学習意欲についても考慮する必要がある。



アメリカ留学申請関連事項


 高校から直接、SATやACTを受験する学生が、アメリカの大学に出願する際、アメリカの大学の採用は、ただ学業成績だけでは決まらないことを知っておく必要がある。とりわけアメリカの大学の学生募集担当者は、中国の高校生がアメリカの大学に出願する際の(出願書類)偽造問題を深刻に受け止めている。
 また、一部の留学仲介による(志願者の)イメージづくりで中国の学生の出願資料がパターン化しており、個性的な特徴がなく、一人一人は皆、際立って優れてはいるが、いったい誰が本当に優れているのかが分かり難いことも中国の学生募集に際し、アメリカの大学に慎重な対応を取らさせている。
  このような状況下で、もともと本当に学業の優秀な子供が全国統一大学入試を棄権して、海外留学しようとしても、中国の志願者間の悪しき競争のせいで結果として志望する学校に入れないとすれば、非常に残念なことである。むしろ、国内でよい大学に入学する方がまだましで、大学院生の段階で海外留学する方がより理にかなっていると言える。

 移民という形で子供に全国統一大学入試を回避させ、アメリカで大学進学させようとする際にも、いくつかの誤った認識・方法を正す必要がある。
 第一に、アメリカで住居を購入しさえすれば、すぐにグリーンカードを取得することができ、地元の公立学校に入学できるというわけではなく、必ず正規の移民ルートを通らなければならない。
 第二に、投資移民は現在、既に順番待ちであり、待機期間は概ね3、4年。しかも投資額の条件も引き上げられる可能性があり、50万ドルから90万ドルまで引き上げられるかもしれないと言う人もいる。保護者は、子供が既に大学進学を控えているのに、投資移民がまだ許可されないということがないよう、きちんと計画する必要がある。
 第三に、たとえグリーンカードを取得して、居住地の公立大学に入ったとしても、全ての人が自動的に州内の学費待遇や奨学金を受けられるわけではない。2年の納税記録と資産証明がなければならず、仮に私立学校に入ったとしても、特待生が多いというわけではない。

 学業が同程度に優秀な学生は、中国からアメリカ留学を出願してよい大学に進学できる確率は、アメリカから出願してよい大学に進学する確率よりも低いというわけではない。
 アメリカの名門校は学生の選考に際しては、その学生の学業面での才能と合わせて社会生活面での活動や民族バランスをより考慮しているが、中国の学生に対しては学業面以外での判定が難しいため、学校側は学業成績とSAT、TOEFL等の成績を重視して判断していることが考えられ、(その選考は)却ってより単純と言えるかも知れない。

(「新通教育」の記事から概要抜粋)