2016.07.11

中国の普通高等教育機関の一つである「独立学院」の考察(下)

 

●2016年教育部が設置を認可した高等教育機関の公示


 ≪高等教育法≫≪民営教育促進法≫≪民営教育促進法実施条例≫≪普通高等教育機関設置暫定条例≫と≪普通本科学校設置暫定規定≫及び≪独立学院の設置と管理方法≫の関連規定に基づいて、全国高等教育機関設置評議委員会の専門家の考察と評議を経て、教育部に報告してその審査を求めた結果、39校の高等教育機関の設置申請が承認された。そのうち、中東部地区の高等教育機関29校、独立学院を独立設置の民営本科学校に再編するもの9校、計画建設と‘資金調達’を経て正式に設立する高等教育機関1校である。関連法律法規の規定と要求に基づいて、教育部は近く上記の高等教育機関の設置を認可する予定で、ここに関係高等教育機関の名簿を社会に向けて公示する。(2016年1月26日 教育部)

 

 

●独立学院の再編(この項、出所:中国青年報)


 教育部は26日公式サイトで2016年に設置認可予定である39校の高等教育機関のリストを公示したが、そのうち独立学院を独立設置の民営普通本科学校に再編するものが9校あった。これによって、全国の独立学院の総数は2010年の323校から現在の266校まで減少するが、これはここ6年近くの間に、全国で57校の独立学院が母体である高等教育機関を正式に離脱して、独立した学校運営を行っており、(その数が)全国の独立学院総数の約1/5を占めていることを意味している。


  今回、再編を申請した独立学院及びその設立する学校の名称はそれぞれ、瀋陽化工大学科亜学院を再編設立する瀋陽科技学院、温州大学城市学院を再編設立する温州商学院、安徽工程大学機電学院を再編設立する安徽信息工程学院、河南理工大学万方科技学院を再編設立する鄭州工商学院、信陽師範学院華鋭学院を再編設立する信陽学院、安陽師範学院人文管理学院を再編設立する安陽学院、華中師範大学武漢伝媒学院を再編設立する武漢伝媒学院、武漢理工大学華夏学院を再編設立する華夏理工学院、武漢大学珞珈学院を再編設立する晴川学院である。


  独立学院の再編作業は2008年に教育部が公布した《独立学院の設置と管理方法》が、独立学院に独立設置の普通本科高等教育機関の基準に基づいて規範化されることを求めるとともに、5年の過渡期を与え、①(独立設置の民営高等教育機関への)再編、②母体である高等教育機関への復帰、③場所を移転して新たに設立、④清算、或いは⑤廃校など6つの規範化に至る方法を提示した。
 独立学院の利益は母体である高等教育機関と出資者等に及び、とりわけほとんどの独立学院は不動産等の投資資本が創設しているが、国家の関連法律・法規の一本化がなされていないために、5年の申請調査・受入検査期間は延期を余儀なくされていた。


 教育部発展企画司関係の責任者は記者の取材に対し、(独立学院の再編という)全国の300校近い独立学院と270万人余りの学生に関わる重大な利益問題について、“穏中求進(安定の中で進歩を求める)”という考えに基づいて、積極的かつ穏当に推進するとしている。

中国青年報の記者の観察によると、国内の独立学院の調整・規範化・最適化のペースはますます速くなり、2010年には全国に合計323校の独立学院があったが、2011年には309校、2012年には303校、2013年には292校、2014年には283校、2015年には266校なった。


  教育に力を入れている湖北省には合計で26校の独立学院があり、今年は3校の独立学院が民営普通本科高等教育機関への再編を申請している。
  河南省の独立学院は8校で、今年、民営普通本科高等教育機関への再編を申請した独立学院は3校あった。
 中国民営教育協会の王佐書会長は、独立設置する民営普通本科高等教育機関への再編申請数が多い省ほど、独立学院の規範化も往々にして進んでいると述べている。


  同様に教育に力を入れている江蘇省の状況は特殊である。南京航空航天大学金陵学院の黄飛健理事長は、江蘇省内の25校の独立学院の大部分は母体である高等教育機関が出資しており、別の10余校の高等教育機関の二級学院は出資者さえいないのに直接学生募集をしていることを示した。そのため、省内では江南大学太湖学院のみが2011年4月に無錫太湖学院への再編を行ない、その他の25校の独立学院の再編プロセスはゆるやかである。


  王佐書会長はかつて、江蘇省には“偽”独立学院が大変多く、独立学院の集団に属しながら、民営メカニズムに基づいて高額の学費を徴収しており、二つの体制・メカニズムのいいとこ取りをしていると激しく非難している。黄飛健理事長は、江蘇省の一部の公営高等教育機関が校友基金会等の形式を用いて、独立学院の出資者の“マネーロンダリング”を行なっており、グレーゾーンを形成するまでになっていると漏らしている。


  独立学院は母体である高等教育機関から“離乳(財政支援の打ち切り)”した後、ブランド・学生募集等といった分野で陣痛(産みの苦しみ・一時的な困難)に直面するかもしれないが、国家及び省市が民間資本の教育分野への参入を奨励するという実施意見が公表された後、一部の独立学院は果敢にも母体大学とつながる“臍帯”を断ち切って、自ら造血(組織を活性化)しようとはかり、独立して発展している。
 温州大学城市学院は温州商学院への再編を申請して、浙江省における独立学院再編の先駆けとなった。
 北京師範大学の鍾秉林元学長は、独立学院には多くの形態があるので、“画一的に処理する”のではなく、必要な保障措置を採用して、学校運営のリスクを回避し、学校運営の質を高めることが、実際に基づいて正しく行動する方法であると示している。(終)